吉浦ブログ
瀬戸内海に面した呉市吉浦。弥生石器が出土したこの街・吉浦を歩いてみると、昔ながらの人なつっこい人情や情緒を感じます。「かくまでに 思はざりしに 来てみれば いと住みやすき よし浦の里」。この歌は、吉浦八幡神社の山の手の歌碑公園に建立されています。紫式部の父である筑紫守・藤原為時が詠んだ和歌です。いにしえの歌そのままに、今も通じる住みやすき吉浦を、画像で捉えてみました。
石組みの底に、清らかな水が湧いています。ここは吉浦松葉町の細道にある泉です。覗いてみると、きれいな砂が見えました。澄み切った水は、昔から、涸れたことがありません。
吉浦は、細道、坂道、曲がり道が多い。散歩していて、人に出会えば、優しい声がかえってきます。
泉に辿り着くには、吉浦駅乗りあいタクシー「あじさい号」が通る市道から、2、3分、山の手の急坂の細道を上がらねばなりません。散歩にはちょっときついけど、泉を見ると、やすらぎますね。
石垣の途中にあるこの泉で、そばにある紐のついたバケツで水をすくい、手を拭ったりするのに重宝します。石組みが面白いですね。
水道水や市販のミネラルウォーターの普及で、井戸の水を利用するなんてことは、なくなってきました。だがしかし、吉浦の街なかでは、庭や畑や空き地、路上わきなど、あちこちで井戸を見かけます。コンクリートの蓋がしてあったり、物置台になっている光景もみます。
民家の軒先を補強した「つるべ井戸」の名残がありました。取りつけてある軒下の大きな滑車には、ロープがついており、いつでも使えるようになっていました(吉浦本町)。
つるべ落としの井戸は、水を汲み上げるのに力がいらないから、重宝です。滑車を備え付けた井戸の光景は、めったにみかけません。庭の水撒きや畑の水やりは、電動ポンプが普及し、井戸の蓋を都度々々あけなくてもすむようになってきました。
クレアラインと並行した汐見橋6号線の県道を散策し、吉浦湾にそそぐ寺山川の渓流沿いを下りていると、比較的新しいコンクリート作りの円筒に蓋がしてある井戸に出会いました。こんな高台でも、井戸があるってことは、吉浦は水脈に恵まれた地だと思いながら、近づいてみました。
高台の駐車場に据えられてあるこの井戸に、二段重ねの鏡もちが置いてありました。水への感謝を捧げるという思いなのでしょうね。蓋の一部は、空気を抜くための穴もありました。
井戸そばの坂道の上方には、クレアラインの高架があり、さらに茶臼山の尾根が見えました。いまの時代、井戸のある光景はほとんどなくなってきましたが、古い吉浦の街ならでは、井戸とを活用する暮があるのでしょうね。
近所の懇意な人から、井戸水で鯉を飼っているというので、見せてもらいました。いるいる。広い池に、カラフルな色の鯉や、単色の鯉…。緋鯉、錦鯉などが同居していました。休むことなく井戸水を池に注いでいるということですから、相当の水量でしょう。湧き水という井戸だからこそ経済的に飼えるのでしょうね。水道代に換算したら、さぞや大変な額と思ったことでした。ともあれ、の~んびり、ゆうゆうとして動く鯉は、見飽きることがありません。おだやかな動きと姿は、最高の癒しになると感じました(吉浦本町で)。
井戸は工夫がこらしてあり、地面と同じようにフラットにしてありました。これは通りやすい。邪魔にならない。生活の知恵を、井戸に有効にいかしていると大いに感心しながら、フラットな井戸を通り抜けました。
井戸は家に一つなのがフツーですよね。ところが、コイのいるここのお屋敷では、フラットな井戸のほかに、どっしりとした石囲いの井戸もありました。聞けば、ず、ずーっと昔には、もう一つ、つまり全部で3つも井戸があったそうな。
吉浦の井戸を巡る散歩は、楽しさ面白さを覚えます。
近づいて、把手を持ち上げてみると、やっぱりきれいな水が、たっぷりとたまっていました。これは井戸というより、大きな泉といったほうがよいくらいの囲い水が見えました。
石段を上がって、高い路地から下を覗き込んでみました。位置を変えることで、大泉の水がよく見えました。 吉浦の街は、畑や庭や路地の脇などで、ポンプのある井戸や、コンクリートの筒状の井戸や、このトタン下の大泉のような湧き水の光景を、よく見かけます。水道が完備している街ですが、大泉を見ていると、水の節約、天然水の活用、省エネなんてことが頭に浮かびました。
吉浦には、細道、坂道、曲がり道が網の目のようにはりめぐらされています。地元の人なら、いつも行き交う何の不思議もない小道ですが、よそから訪れる人には、なかなか覚えにくい道がいくつもあります。
山の手あたりの吉浦松葉町の路地を、歩いてみました。おや、こんなところに、共同井戸のようなものがある、と珍しいものに出くわすのも、散策の楽しさですね。道しるべのような井戸です。小さい子が、落っこちないように、頑丈な鉄製の柵がしてありました。
反対側に回ってみました。周囲はしっかりした石組み。上にも、重いコンクリートの蓋で固定してありました。遠い昔の水利用が偲ばれます。(吉浦松葉町で)